アメリカ型の雇用は大変か?
アメリカ型の雇用は大変か?
アメリカは今日あたりから休日モードです。こちらの連載も今週あたりからお休みを頂こうかと考えています。時間に余裕があれば投稿する予定ですが、内容はアメリカでのエンジニアリングライフなど軽い内容にしようかと思っています。今日は、アメリカでのエンジニアの働き方や雇用の現状などを紹介しようと思います。
日本の終身雇用制度が揺らぎ始めて、アメリカ型の雇用に対する意見や議論を見かけますが、言われている程大変ではありません。この記事ではアメリカで働いて感じた事をまとめてみました。
目次 |
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アメリカの雇用形態 |
採用プロセス |
給与体系 |
アメリカのエンジニアは大変か? |
まとめ |
アメリカの雇用形態
アメリカの雇用形態と言っても、職種によってかなり違ってきます。この記事では、アメリカでの技術職(エンジニアリング)の話を中心に書いています。 他の職種の場合には、結構事情が変わってくると思いますので、その辺りはあらかじめご理解ください。
大きな違いは、一般的に新卒の一括採用のような仕組みは殆どありません。雇用の基本は、新卒、非新卒に関わらず募集は、空いたポジションや新規に作られたポジションに対して行われます。 当然ですが、採用されると何らかの形で仕事が割り当てられて、仕事をすることが求められます。最近よく見かける日本の記事では「JOB 型雇用」と呼ばれているようですが、基本的に仕事内容を具体的に提示して、必要な知識やスキル、経験を基に選考する仕組みです。
このような仕組みのため、採用の主体は、採用部門、つまり、採用後に配属されて仕事をする部門が中心になって行います。人事部門は、採用のサポートという位置付けになります。そういう事情ですので、基本的な人事権は採用部門のマネージャーにあります。採用枠は、部門ごとに人数が決められているので、辞めた人の穴埋めか、事業の拡張などで増員が必要になった場合などに、部門のマネージャーが新規の枠を申請して認められると採用できるという仕組みです。
このような実態のため、長期の研修などを行うケースは稀で、通常は即配属して、仕事が割り当てられます。あとは、仕事をしながら必要な研修や教育があれば受けるという感じになります。
必要な知識のレベルや経験によって、ジュニア(エントリーレベル)、中堅、シニア(リーダー格)、マネージャーなどに分類されます。
採用プロセス
通常は、募集要項を社内や社外(インターネットや広告)で告知して行う場合が多くなります。 優秀な人を雇いやすいという理由で、社内の人からの推薦してもらえると面接の候補者として有利になる場合も多くなります。実際の面接は、部門のマネージャーと将来一緒に働く人(部門のメンバー)など、複数の人と別々に面接する場合が多く、会社や部門によりますが、半日から 1 日かかる事も珍しくありません。 いきなり、こうした長時間に及ぶ本格的な面接を行う場合もありますが、その前に電話などで事前面接をして候補者を絞る場合もあります。こうした事前スクリーンは人事の人が行う場合もあれば、部門のマネージャーなどが行う場合もあります。
以前は、本番の面接はオフィスに出向いて行う場合も多かったと思いますが、COVID-19 の影響で最近では、ZOOM による面接も増えています。
面接は、実際にエンジニアリングの仕事をしている人が行う場合が多いので技術的な詳細まで質問される場合が多く、実際に何をやったか、その分野の理解度はどの程度かを含めた、考え方のプロセスなどを評価します。また、コミュニケーションの取り方や一緒に働きたいかを双方でチェックするような形で進められる場合が殆どです。
面接は1回の場合もあれば、必要に応じて2回目の面接が組まれる場合があります。
採用部門のマネージャーは面接をした人からのフィードバックを踏まえて採用するかしないかを決めます。
採用を決めた場合は、給与などの条件を調整して候補者に「オファー(Offer)レター」を出します。
候補者は複数のオファーをもらっている場合も多いので、条件や面接の時の情報を基に、オファーを受けるかどうか決めて返事をするようになっています。つまり、応募者側にも決定権があるということです。
給与体系
給与は基本的に、年棒制です。フルタイムで働く場合は、残業手当などはありません。 評価は、割り当てられた仕事の結果で評価されます。通常は定期的に上司と話す機械(one-on-one)が行われて、割り当てる仕事の内容、進捗状況、成果などを話す機会が設けられます。基本的に相互の合意の基に仕事を進めるので余りおおきな問題になることは少ないと言えます。問題にある場合や不満に思う場合は、会社を辞めて別のポジションを探すケースが殆どです。この方が、雇用する側も、雇用される側もストレスを溜めずに済むのである意味よくできたシステムと言えます。
給料は、年棒を分割して、月2回とか2週間ごとのように支給されます。 ボーナスは会社の業績や、個人の成果によって支給される場合がある程度で、必ず支給されるものではありません。
アメリカのエンジニアは大変か?
では、本題のアメリカのエンジニアは大変かという話ですが、日本で言われているほど大変ではないと思います。 効率よく仕事をすれば、働く時間は短くても問題はありません。職場が合わなければ別の仕事を探せば良いだけで、同じような条件やより良い条件の仕事をたくさんあるので仕事を見つけるのも通常は大きな問題ではありません。
むしろ、ソフトウエアのエンジニアなどでバグを多数出して、長時間働いた方が結果的に残業代が増える分収入が増えるというような矛盾がないのは、より健全な方法だと感じます。 日本の一般的な開発より効率的に上手くやっているので、アメリカで働くようになって 20 年以上経過していますが、週末や休日に働いた経験は数えるほどしかありません。
あえて、課題というか少し大変な部分は、新卒の就職かと思います。 基本的に「即戦力」を求められるので、学校でしっかり勉強する必要がありますし、インターンシップなどの機会を利用して、実務に対応できる経験と知識を準備する必要があります。 インターンなどを余りしていない学生は卒業後も仕事がなかなか見つからないケースもよく耳にします。
また、エンジニアの場合、就職後も新しい技術などを取り入れるなど勉強を続ける必要があります。こうした努力なしにシニアのエンジニアになるのは難しいと言えます。
まとめ
長年働いた経験からは、アメリカのエンジニアの働き方の方が良いと感じる面が多いです。 むしろ、日本にいた時の方が長時間労働をしていたと感じています。
ただ、アメリカのエンジニアは「考える」ことを常に求められていて、何かを言うと、その理由や根拠を求められる気がします。
よく言われるのが、アメリカの会社はすぐに首を着られるというイメージがあるようですが、余り無茶な解雇をする事は稀です。解雇されたり、自分から離職しても求人市場は割と大きく、比較的次の仕事も見つけやすいので、日本で考えらているイメージとは少し違うように思います。
一方で、きちんと自分をアピールできないと面接に辿り着くのが難しい事もある程度事実ですし、面接でもしっかり自分の実績や知識をアピールするコミュニケーション能力も必要です。そう言う意味では厳しい一面があります。特に、アメリカ国外からの応募は労働ビザの取得もあって、ハードルは高いのは事実です。